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陶芸作家のまち、美濃。CRAFTの旅 vol.1

陶芸作家のまち、美濃。CRAFTの旅 vol.1

ものづくりの産地を訪れ、ちょっとした旅気分へとご案内するCRAFTの旅、第一回の今回は「美濃」。

「美濃焼」の名が知られているように、岐阜県南部、特に多治見市や土岐市など南東部の東濃と呼ばれる地域には、古くより焼き物の産業が根付いています。

美濃には自分の手でオリジナルの作品をつくる「陶芸作家」がとても多く、全国から陶芸を学びに集まる学校、研究所や共同工房、県立美術館による展示イベントなどなど、地域として作陶を支援するコミュニティがありました。



私達がこの地を訪れた理由は、オンラインで作家物をお届けする「CRAFT 作家展」の出展作家さんを取材するため。一言に「美濃焼」とは言えない、それぞれ全く違った作風の5組の作家さんをご紹介します。


壽泉窯 安藤寛泰さん

安藤寛泰さんは、その名の通り結晶のような表情を見せる「結晶釉」の表現で知られる作家さんです。安藤さんの作品は海外でとても人気があり、料亭や高級ブランドからのオファーも来るのだそう。工房のすぐ隣りにあるギャラリーにお邪魔させて頂きました。



「結晶釉って窯の1,2度の違いですごく出方の違いが出るんです。釉薬を厳密に調合しても、焼く段階でかなり変わってきちゃうんです」

2つと同じものはない、というのも結晶釉の魅力です。CRAFT作家展では、個体差が強く出る一部のアイテムは一枚ずつ写真を撮り、一点物として出展することにしました。

「これいいなあ」とじろじろ見てたりすると「それかわいいでしょ」と、すかさず作品に対するアツい愛が飛んできます。



安藤さんは京都で陶芸を学び、結晶釉の技術を身につけたのだそう。結晶釉は京都の歴史ある窯元が有名ですが、安藤さんは新しい表現を目指しました。

「結晶釉って『和の器』がほとんどなんだけど、もっと表現の幅を広げてみたいなと思ったんです。最近ではピンクと水色の、サーフカラーみたいな器を作ってみたり。」



レストランからもオリジナルの器の依頼を受ける安藤さん。このご時世で少し仕事が減ってしまったのだそう。その間に色々なテストをしているそうで、ギャラリーにはユニークなデザインの作品が並んでいます。

「これとか見方によっては、車の窓の水滴とか、古代の壁画に見えてきたり。いろんなことが想像できて面白いんですよね。でも作るのがすごく難しくて、実はいまだにコツがつかめてないんです」と楽しそうに語っておられたのが印象的でした。



「オブジェみたいに、棚に飾って欲しいです」
かくいう私も、このとき抹茶碗を衝動買い。家に飾って毎日愛でさせてもらっています。



3RD CERAMICS

多治見駅にほど近い、一見すると工房があるとは思えない一角に3RD CERAMICSはあります。工房として使う建物も、もとは住居を兼ねた飲食店だったのだそう。ろくろや釉薬、試作品が並ぶ様はさながら陶磁器のラボのようでした。




長屋さんと土井さんは、多くの作家を輩出する「多治見市陶磁器意匠研究所」で出会い意気投合。「陶芸作家」という響きに、なんとなくしっくりこなかったのだそう。試しに何かはじめてみよう、というところからスタートし9年。3RD CERAMICSという今の形になったのだといいます。




「この地域って、個人でやっている作家とメーカー、窯元が入り乱れているんですが、その真ん中みたいなニュアンスで量産と手作りの間を探ろうと。第3の切り口で焼き物が出来ないかなと思ったんですよね。」



いわゆる「作家もの」は形や質感を繊細に表現したり、量産では難しい表現を突き詰めたものが多くあります。3RD CERAMICSのアイテムはそれとは違い、かといって大量生産のようなカッチリと決まった形をしているわけではありません。制作と生産のあいだ、これが第三の陶磁器「3RD CERAMICS」ということです。



自らろくろを回したり、原型を手で作りつつも、量産の技術も使う。作家さんの作品ほど敷居が高いわけではなく、量産品よりも「手」を感じる。そのバランスが3RD CERAMICSの魅力なのです。



大道宏美さん

大道宏美さんの工房は、移築したという古民家のご自宅にあります。窓からの見晴らしが良く、きれいに整頓されていました。



大道さんの作品の特徴は、サラッと白い磁器にとても細い呉須の直線。呉須とは、磁器の絵付けに用いられる蒼い絵具のこと。実は、定規も使わず手で描いているのです。

「筆でひたすら描きます。最初は手が震えてたんですけど、慣れるともう全然。シュッと。」



ミニマルな印象ですが、近づいてよく見ると手描きらしい濃淡ある線。これがたまらなく可愛いのです。遠目と近目で印象が違う面白さ。線の上には釉薬がちょんと乗せられていて、ぷっくりとしています。

「雨というか、線がモチーフのものが多いです。線がすごく好きですね。陶芸の前は絵を描いていて曲線が好きだと思っていたんだけど、陶芸を始めると直線が好きだということに気づきました。」



「線のごまかせない感じ。たとえば漫画だと、線一本の描き方にとても意味がありますよね。その面白さに気づいたんです。」

もう一つの特徴はその繊細な薄さ。白い磁器に光が透けて、裏の絵付けが見えるほど薄いのです。

「カチッと作りたいから、土の良さみたなのを殺しちゃうんですよ。だから磁器が合ってるんです。」



釉薬をつけず、生地の質感にスッと線を引く。これ以上ないほど要素の削られたミニマルなデザインですが、そこには確かな温かみがあります。

作品には往々にして「その人らしさ」がにじみ出るもの。大道さんの作品も、きっと実直なお人柄を映しているような気がしました。



荘山窯 林健人さん

親子二代で営まれている荘山窯。林健人さんは職人として製造に携わりつつ、作家として作品を作られています。代々陶磁器の製造に携わり、先代からろくろを回すような、手で作る窯を始められたのだそうです。



「この地域は、安土桃山時代からの焼き物の流れがあるんです。志野ってのはその頃からの器で、今でも名残があるんですよ。他の窯や作家さんは斬新だったりおしゃれなものを作ってるけど、うちはどうも昔の感じから抜けきれないもんで。」



作品は土ものらしい荒々しく大胆な表情。仰るように第一印象としては「昔の感じ」かもしれません。しかしその大胆さがもはやポップで、逆に今までに無い新しさを感じてしまいました。



工房では絶えずカラカラとした音が響いていました。伺ってみると、釉薬を混ぜてるんです、とのこと。原料の入った瓶を機械で回して撹拌していました。

周りには様々な種類の原料、そして何やらメモが貼られた瓶が大漁にありました。陶芸への愛が伺えます。「曜変天目みたいなの出ないかな、ってやってるんですけど(笑)」



作業場には大きな写真集があり、器のデザインとして参考にするそう。

「こういう雰囲気の器がほしいと依頼が来た時に見るんです。たとえば安土桃山の器。描かれているのは鳥や草とかそのへんの何気ないモチーフだけど、めちゃくちゃ上手いんです。簡単なようで描けないんですよ。」



伝統から学び、常に研究するその姿勢から生み出される表現。ちょっと憧れてしまいます。

つちのね工房 アサ佳さん

アサ佳さんの作品は「どうやって作ってるんだろう」というくらい繊細で複雑なデザインが印象的。

「よくやる作り方として『鋳込み』があります。量産に適した作り方なんだけども、そこから手を加えることで、量産では出来ないことをやっているんです。」



たとえば二重タンブラーの網目部分は、一つ一つナイフを使い、手で削って穴を開けています。

「削る場所は感覚ですね。土ってどんどん硬くなってくるから、下書きしてる時間がないんですよね。」




「工芸って『質感』ですよね。実際に触ってみると、見た目に反してすごくすべすべしてるとか。すごく軽いとか。量産ではできない面白さがあります。」

確かにアサ佳さんの作品も、有機的でやわらかそうだけどつるっと硬質であったりと、見た目とのギャップが印象的です。




「土と格闘、みたいなこともやってみたんですけど全然合わなかった。格闘というより、コントロールしたいですね(笑)」

釉薬を試すカラーチップを見せてもらいながら仰った言葉が印象的でした。作家さんによって得意なことや、表現したいこと、その手法はまったく変わってくるのです。



作品を通して、人に触れる。

作家さんはどなたも自身の哲学、考えに基づいて作品を作っています。その様は本当にそれぞれで、考えや人柄がそのまま作るものにも出てくる。モノに人間性が垣間見えるのが、作家物の面白いところなのだと改めて気づかされた旅でした。取材に応じてくださった皆様、ありがとうございました。


CRAFT STOREでは初の試みとして、「CRAFT 作家展」を始めます。ここでご紹介した5組の作家さんの作品が、オンラインでお買い求めいただけます。


CRAFT 作家展 美濃編は7/15日 12:00よりスタート。

一点物も多くありますので、どうぞ皆様お見逃し、お買い逃しなく。


※本企画は感染症対策を徹底し、取材先の了承を得た上で行っています。


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